
背中の痛みと骨密度の低下、先延ばしにせず骨の状態を確かめる
骨粗鬆症は、放置したからといってすぐ寝たきりになる病気ではありません。しかし、骨がもろくなると、転倒などによる骨折をきっかけに活動量が減り、日常生活に支障をきたしたり、介護が必要になったりすることがあります。健診で骨密度の低下を指摘されたままにしていませんか? かがんだ後に背中が痛む場合、背骨の骨折が隠れている可能性があります。骨折が暮らしに及ぼす影響や早めに受診したい症状、検査・予防の方法について、分かりやすく解説します。
この記事の要点まとめ
- 骨粗鬆症では骨折をきっかけに活動量が減り、日常生活や介護に影響することがあります。
- 背中や腰の痛み、身長低下、股関節痛、歩きにくさが続く場合は整形外科に相談しましょう。
- 骨密度や骨折歴を確認し、薬・食事・運動・転倒対策を医師と検討します。
骨粗鬆症を放置すると、骨折から寝たきりにつながるのはなぜ?

寝たきりへの入り口になるのは「骨折」です。骨がもろいまま転倒やかがむ動作が重なると骨が折れやすく、折れた場所によっては歩く力や起き上がる力が落ちていきます。
骨密度の低下に、加齢や閉経後の変化が重なる
骨は、古い骨を壊す働きと新しい骨を作る働きを繰り返して保たれています。閉経後は女性ホルモン(エストロゲン)が減り、骨を壊す働きが強まって骨量が減ると考えられています1。
見過ごしやすいのは、骨が弱っても痛みが出にくい点です。畑仕事が普段どおりできていても、骨の強さが保たれているとは限りません。
高齢者では、喫煙や運動不足、低栄養などが、筋肉量や筋力の低下を招く「サルコペニア」と関連することが報告されています2。骨だけでなく筋肉も弱くなると、転倒しやすくなるうえ、骨折のリスクも高まります。骨と筋肉の両方を意識した対策が大切です。
背骨の骨折と太ももの付け根の骨折では、暮らしへの影響が異なる
骨粗鬆症で起こりやすい骨折のうち、生活への影響が大きいのが次の2つです。
| 背骨の骨折(椎体骨折) | 太ももの付け根の骨折(大腿骨近位部骨折) | |
|---|---|---|
| きっかけ | かがむ、重い物を持つ、尻もち | 転倒 |
| 主な症状 | 背中や腰の痛み、身長の低下、背中の丸み | 股関節の強い痛み、立てない・歩けない |
| 暮らしへの影響 | 前かがみの作業や長い運転がつらくなる | 入院や手術を検討することが多い |
背骨の骨折(脊椎圧迫骨折)は、気づかれないまま進むこともあります。痛みで動くのがおっくうになり、筋力が落ちて次の転倒を招く。この連鎖は骨折スパイラルとも呼ばれます。ただし経過は人によって異なり、骨折したら要介護になると決まっているわけではありません。
骨折後の回復は、骨折した場所と元の歩く力でも変わる
寝たきりになるかどうかは、年齢だけでは決まりません。骨折した場所、心臓病や糖尿病などの持病、骨折前にどれだけ歩けていたかが関わります。
太ももの付け根の骨折では、入院や手術、リハビリの進め方は体の状態によって異なり、医師が判断します。痛みや持病で早く起き上がるのが難しい場合は、医師やセラピストが体の状態を見ながら進め方を調整します。骨折前の筋肉量や活動量、その後の動きやすさが気になる場合は、日頃の運動についても医師にご相談ください。
なお、手首の骨折後のリハビリを調べた研究はありますが3、対象となる骨折が異なるため、股関節の骨折後の見通しにそのまま当てはめることはできません。
背中や股関節の痛みで、受診を急ぎたいサイン
次のような場合は、整形外科への早めの相談を検討してください。
- 転んだ後に立てない、歩けない、脚の付け根が強く痛む
- かがむ・持ち上げる動作の後から背中が急に痛み、寝返りや起き上がりがつらい
- 以前より身長が縮んだ、背中が丸くなってきた
脚の力が急に落ちる・悪化する、尿や便が出にくい・漏れるといった症状があるときは、神経症状として早急な評価が必要な場合があるため、速やかに医療機関へ相談してください4。
転倒直後は動けても、数時間後や翌日に痛みが強まることがあります。「2日待ってから」と時間で区切らず、痛みが続く・強まる時点で受診を考えましょう。骨折が否定されるまでは、畑でのかがみ作業や重い物の運搬、車の運転は控えるようにしましょう。
ポイント
転倒やかがむ動作の後、立てない・歩けない場合は早めに相談し、動けても背中・股関節の痛みが続く・強まるなら受診を考えましょう。
背中の痛みと骨密度を調べ、骨折を防ぐためにできること

最初にするのは、今の背中の痛みが骨折かどうかと、骨の強さを確かめることです。そのうえで薬、食事、運動、転倒対策を暮らしに合わせて組み立てます。
背中の痛みと骨密度を相談するときの診察の流れ
健診で骨密度の低下を指摘された方や、骨密度が下がりやすい閉経後の女性1は、痛みがなくても相談の目安になります。整形外科では一般に、背中の痛みを診察し、必要に応じてレントゲンなどの画像検査で骨折の有無を確かめます。
骨密度は、測定方法や測る部位を体の状態に応じて医師が判断し、採血で調べる項目も必要に応じて決めます。治療が必要かどうかは数値だけで決めず、これまでの骨折歴や背骨の状態も合わせて判断します。
骨密度検査は事前予約制ですが混雑状況に応じて当日撮影も可能な場合があります。当院にお気軽にご相談ください。
薬は骨折リスクと通院の続けやすさを踏まえて選ぶ
骨粗鬆症の薬には飲み薬と注射があり、使う間隔や続ける期間は薬の種類と患者さんの状態で変わるため、医師が判断します。副作用の種類も薬ごとに異なるので、始める前に説明を受け、気になる変化があれば早めに相談してください。
薬の選択では、骨密度や骨折リスクに加え、通院の状況や生活リズムも考慮し、採血の結果や経過を見ながら医師と方法を見直します。ご自身の運転で通う方と、家族の送迎が必要な方とでは、続けやすい方法が違うためです。
畑仕事を続けるため、食事では何を意識する?
骨の材料になるカルシウムに加え、その吸収を助けるビタミンDや、骨へのカルシウムの取り込みを助けるビタミンKなど、様々な栄養素を偏らずに取ることが基本です6。乳製品や小魚、大豆製品、魚、卵、きのこを組み合わせると取りやすくなります。
「これを食べると骨粗鬆症が進む」と決めつけられる食べ物はありません。見直したいのは、飲酒の量や塩分の取りすぎ、極端な食事制限といった食習慣全体の偏りです。
骨折がないと分かってから、足腰の運動と転倒対策を始める
背中の痛みの原因が分からないうちは、自己流の体操や筋トレは控えてください。骨折がないと確認できてから、体力に合わせて歩く習慣や足腰の筋力を保つ運動を少しずつ取り入れます。
筋肉量の低下や転びやすさ、歩行などの動作に不安を感じたら、早めに医師にご相談ください。また、畑の段差やぬかるみ、玄関や廊下の暗さ、めくれた敷物など、身近な環境にも転倒のリスクは潜んでいます。骨の健康を守ることは、畑仕事や運転など、自分らしい暮らしを続けるための大切な一歩です。当院では、骨粗鬆症の専門知識をもつセラピストもおり、皆さんが安心して日常生活を送れるよう、骨の健康維持をサポートしています。
ポイント
運動を始める前に、まずは骨折の有無を確認することが大切です。検査で骨の状態を正しく把握し、自分に合った対策を始めることが、これからも安心して畑仕事を続けるための第一歩です。
よくある質問
Q. 骨粗鬆症に悪い食べ物はありますか?
A. 特定の食べ物だけで骨粗鬆症が進むとは言い切れません。気をつけたいのは、お酒の飲みすぎ、塩分の多い食事、極端な食事制限など、食習慣全体の偏りです。カルシウム、ビタミンD、たんぱく質を毎日の食事で偏らずに取ることを意識してください。
Q. 70代ではどのくらいの人が骨粗鬆症ですか?
A. 骨粗鬆症は年齢とともに増え、特に閉経後の女性に多い病気です。割合は調査の方法や対象によって異なるため、数字よりも、ご自身の骨密度を一度測って現状を知ることをおすすめします。
Q. 骨粗鬆症が進むと、どのような症状が出ますか?
A. 骨が弱ること自体は痛みを伴いにくい一方、背骨の骨折が起こると背中や腰の痛み、身長の低下、背中の丸みが出ることがあります。転倒で太ももの付け根を骨折すると、立てない・歩けないといった症状が出ます。
Q. 転倒した直後より、時間がたってから痛くなるのはなぜですか?
A. 転んだ直後は気持ちが張りつめて痛みを感じにくく、その後に腫れや内出血が広がって痛みが強まることがあります。時間で区切って様子を見るより、痛みが続く・強まる、歩きにくいと感じた時点で整形外科へ相談してください。
Q. 骨密度検査の費用や予約方法を知りたいです。
A. 当院では骨密度の検査料は、3割負担で1,500円程度です。
事前予約制ですが混雑状況に応じて当日撮影も可能な場合があります。当院にお気軽にご相談ください。
参考文献
1. 閉経後骨粗鬆症|一般の皆様へ|日本内分泌学会. https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=51
2. Gao Q, Hu K, Yan C, et al. Associated Factors of Sarcopenia in Community-Dwelling Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2021. PMID: 34959843 / DOI: 10.3390/nu13124291
3. Handoll HH, Elliott J. Rehabilitation for distal radial fractures in adults. The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015. PMID: 26403335 / DOI: 10.1002/14651858.CD003324.pub3
4. 腰椎疾患 | KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト. https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000167/
5. Jin H, Jin H, Suk KS, et al. Antiosteoporosis medication in patients with posterior spine fusion: a systematic review and meta-analysis. The Spine Journal. 2025. PMID: 40280495 / DOI: 10.1016/j.spinee.2025.04.018
6. 骨粗鬆症の予防のための食生活 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-007.html
2000年 熊本大学教育学部付属中学校卒業
2003年 熊本県立玉名高等学校卒業
2010年 福岡大学医学部医学科卒業
2010年 宮崎県立延岡病院
2011年 熊本大学医学部付属病院
2012年 熊本大学整形外科入局
2012年 熊本大学医学部付属病院整形外科
2013年 熊本市民病院整形外科
2014年 水俣市立総合医療センター整形外科
2015年 山鹿市民医療センター整形外科
2017年 公立玉名中央病院整形外科
2020年 平山整形外科医院開院
日本整形外科学会認定リハビリテーション医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本整形外科学会認定リウマチ医
身体障害者福祉法第15条指定医
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