
敷居でつまずいた程度で骨が折れたとき、体の中で何が起きているのか
「若い頃は手をついても何ともなかったのに」と戸惑って来院される方は少なくありません。立った高さからの転倒で骨が折れる場合、背景に骨の強度低下が隠れていることがあります。 骨がもろくなる仕組み、折れやすい部位、DEXA法による骨密度検査の流れを整形外科の視点で整理します。
この記事の要点まとめ
- 敷居でつまずくような軽微な転倒による骨折は、骨粗鬆症が背景にある場合があります。
- 手首や背骨、足の付け根は折れやすく、歩ける状態でも画像での確認が大切です。
- DEXA法検査で骨密度を数値化し、適切な治療や環境整備で次の骨折予防を目指します。
つまずいて骨折する原因とは?骨粗鬆症と「脆弱性骨折」の仕組み

骨は硬い塊のように見えて、毎日つくり替えられている組織です。古い骨を溶かす働き(骨吸収)と新しい骨を積み上げる働き(骨形成)が釣り合っていれば強度は保たれますが、このバランスが崩れると内部の構造が少しずつスカスカに変わっていくと考えられています2。
立った高さからの転倒でも折れる「脆弱性骨折」の判断基準
整形外科では、立った姿勢の高さから転ぶ程度の軽微な外力で生じた骨折を「脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)」と呼びます。 敷居につまずいて手をつく、椅子から滑り落ちる、重い荷物を持ち上げた拍子に背中が痛む。こうした場面での骨折が当てはまります。
目安となるのは、加わった衝撃の大きさと「折れた」という結果の釣り合いです。交通事故や高所からの落下なら健康な骨でも折れますが、日常動作程度の力で折れた場合は、骨そのものの強度が下がっている可能性を考えます。
骨の強度はカルシウムなどの量(骨密度)だけで決まるわけではありません。コラーゲンの質や骨の微細構造(骨質)も関わり、骨密度の数値がさほど低くない場合でも、骨質の低下があれば折れやすくなることが指摘されています2。
女性ホルモンの減少と加齢が骨の代謝バランスを崩す理由
女性の骨を支えてきたのがエストロゲンです。骨を溶かす細胞の働きを抑える役割があり、閉経でこのホルモンが急激に減ると、骨吸収のブレーキが外れたような状態になるとされています1。
閉経後の数年は骨量が減りやすく、60代から70代では「以前と同じ暮らしをしているだけ」でも骨の状態が変わっていることがあります。加齢につれて骨をつくる側の働きも落ち、腸からのカルシウム吸収やビタミンDの活性化も低下していきます1。
ホルモンの変化と骨形成の低下が重なり、自覚のないまま骨が弱くなっていくのが骨粗鬆症の成り立ちです。痛みという警告が出にくいため、骨折という出来事が最初のサインになるケースも珍しくありません。
つまずいたときに折れやすい部位と見逃しやすい初期症状

骨の強度が下がった状態では、折れる場所にある程度の傾向が出ます。どこを痛めたかで、その後の暮らしへの関わり方も変わってきます2。
手首(橈骨遠位端)や大腿骨・背骨に起こりやすい骨折の特徴
前向きに転んで手をついたときに多いのが橈骨遠位端骨折(手首の骨折)。50代から60代に多くみられ、「たいしたことではない」と受け取られがちですが、骨の強度低下を知らせる早い段階のサインとして受け止めたい骨折です。
背骨に起こるのが椎体圧迫骨折。しりもちや布団の上げ下ろしのような動作で生じることがあり、はっきりしたきっかけがないまま少しずつ潰れていく場合もあります。背中の丸まりや身長の低下として現れ、「いつの間にか骨折」と呼ばれるのがこのタイプです。
横向きに転んで足の付け根を打つと大腿骨近位部骨折が生じることがあります。立てなくなることが多く、入院と手術を要するケースが一般的で、その後の歩行や自立した生活に関わる部位です。一度骨折を経験すると別の部位の骨折も起こりやすくなると報告されているため、最初の一回を「連鎖の入口」と捉えて対策を始める意味があります2。
「ただの打撲」との違いを見極める受診の判断基準
打撲と骨折は、その場で見分けるのが難しいことがあります。次のような所見があるときは、様子をみるより整形外科での画像評価をご検討ください。
- 押すと痛い場所を指1本で示せるほど限られている(限局した圧痛)
- 手首や足の形が普段と違って見える、腫れがどんどん強くなる
- 手をついた側で物を持てない、体重をかけて立てない
- 一晩たっても痛みが引かず、じっとしていても痛む
- 背中や腰の痛みで寝返りや起き上がりがつらい
足の付け根を打って立ち上がれない、意識がはっきりしない、頭を打ったといった場合は、無理に動かさず救急要請の検討を。痛みが軽いまま骨折している例もあるため、「歩けたから問題ない」とは言い切れません。 湿布で数週間過ごしてから来院され、レントゲンやMRIで骨折が確認されることもあります。
骨密度を調べるDEXA法検査と玉名市での再骨折予防ステップ
骨の状態は見た目ではわかりません。数値として把握するために行うのが骨密度測定で、なかでもガイドラインで推奨されているのがDEXA法(DEXA法・二重エネルギーX線吸収測定法)です2。
腰椎と大腿骨で測定するDEXA法(骨密度測定)の検査手順
DEXA法は2種類のエネルギーのX線を使い、骨と軟部組織を分けて骨のミネラル量を測ります。手首やかかとで測る簡易的な方法と異なり、骨折が生活に大きく関わる腰椎と大腿骨を直接測定できる点が特徴です。
流れはシンプルで、専用の寝台に仰向けになり、装置がゆっくり移動しながら撮影していきます。針を使うことはなく、着替えのみで受けられる場合も多く、測定そのものは5分程度。X線を使いますが被ばく量はごく少量に抑えられています。
結果は若い世代の平均値(YAM=若年成人平均値)に対する割合で示され、70%以下、あるいは80%未満で脆弱性骨折がある場合などが診断の目安とされています2。当院では診断時に採血も併せて行い、骨代謝の状態やカルシウム値、肝臓・腎臓の働き、ほかの病気が背景にないかを確認しています。
骨折の連鎖を防ぐ薬物治療と玉名市の平山整形外科医院での相談・Web予約
骨粗鬆症と診断された場合は、内服薬や注射薬による薬物療法に食事と運動の見直しを組み合わせ、骨折の連鎖を防ぐことを目指す方針を検討します。薬の選択は骨密度の値や骨折の有無に加え、通院のしやすさや生活リズムも踏まえて医師がご提案します。カルシウム・ビタミンD・たんぱく質を意識した食事、そしてロコモティブシンドロームを見据えた運動の継続も柱になります1。
住まいの見直しも同時に進めたいところ。敷居の段差、電気コード、めくれたカーペット、脱げやすいスリッパ、夜間の暗い廊下は、つまずきの起点になりやすい箇所です。手すりの設置や段差解消には介護保険の住宅改修が使える場合があり、担当窓口への相談も一案でしょう。
当院は骨密度測定装置(DEXA)を備え、ガイドラインで推奨される腰椎・大腿骨の骨密度測定を行っています。院長は「特にリハビリテーションと骨粗鬆症の治療に力を入れたい」との思いで玉名市に開院し、X線装置・エコー・オープンMRIによる評価体制も整えました。まずは骨の状態を数値で知ることから始めてみませんか。
よくある質問
Q. 骨粗鬆症になると骨折しやすいのはなぜですか?
A. 骨の内部構造がスカスカになり、カルシウムの量(骨密度)とコラーゲンなどの質(骨質)の両面で強度が下がるためとされています。立った高さから転ぶ程度の力でも耐えきれなくなることがあります。
Q. 骨粗鬆症で骨折したらどうなりますか?
A. 部位によって対応は異なります。手首なら固定や手術のあとにリハビリを進めることが多く、足の付け根の骨折では入院・手術となる場合が一般的です。一度骨折すると次の骨折が起こりやすいとされるため、治療と並行して骨密度の評価を行います。
Q. 骨粗鬆症になる原因は何ですか?
A. 閉経に伴う女性ホルモンの減少と加齢が大きな要因とされています。加えて、カルシウム・ビタミンD不足、運動量の低下、喫煙や過度の飲酒、ステロイド薬の使用やほかの病気が関わることもあります。
Q. 「いつの間にか骨折」とはどういう状態ですか?
A. 背骨の圧迫骨折で、はっきりした転倒がないまま少しずつ潰れていくケースを指す言い方です。強い痛みが出ないこともあり、背中の丸まりや身長の低下で気づかれることがあります。
Q. 検査や治療の予約はどうすればよいですか?
A. 骨密度検査を希望されるの場合は問診票を記載する際に骨密度検査希望にチェックをお願いします。治療については検査結果を見て説明させていただきます。
Q. 骨密度の検査は毎回必要ですか?通院は長引きますか?
A. 骨密度測定は毎回の受診で行うものではなく、経過をみる間隔は医師が判断します。治療を始めた場合は定期的な受診で状態を確認していく形になります。ご予定や生活リズムに合わせてご相談ください。
参考文献
1. 日本内分泌学会(内分泌疾患・ホルモン異常に関する学術情報) https://www.j-endo.jp/
2. 公益社団法人 日本整形外科学会(骨・関節・脊椎・スポーツ外傷の診療に関する学術情報) https://www.joa.or.jp/
2000年 熊本大学教育学部付属中学校卒業
2003年 熊本県立玉名高等学校卒業
2010年 福岡大学医学部医学科卒業
2010年 宮崎県立延岡病院
2011年 熊本大学医学部付属病院
2012年 熊本大学整形外科入局
2012年 熊本大学医学部付属病院整形外科
2013年 熊本市民病院整形外科
2014年 水俣市立総合医療センター整形外科
2015年 山鹿市民医療センター整形外科
2017年 公立玉名中央病院整形外科
2020年 平山整形外科医院開院
日本整形外科学会認定リハビリテーション医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本整形外科学会認定リウマチ医
身体障害者福祉法第15条指定医
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